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飼育✻販売のお仕事
第6章 初出勤は人間のお世話?!
地下二階はさしずめホテルだ。
多目的室が三つほどあり、シャワー室に調理場、倉庫、洋室、和室が揃う。
伊澄は志穂の指南の下、ケージ内全ての簡易トイレを取り替えたあと、毎朝人間に与えるという餌を準備して、各々の売り場へ運んでいった。
献立は、一般的な朝食と変わらなかった。一方で、里子が話していた通り、地下一階奥の売り場に隔離された哺乳類らに与えるのだけは、病院食も同然だった。
十一時近くまで清掃に立ち回り、それから伊澄は志穂に従って、地下一階のフロアに出た。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませ」
客がいた。
上品な着物に身を包んだ四十代くらいの女と、伊澄より少し歳上と見られる派手な青年だ。
二人とも、鉄格子の向こうに展示された哺乳類達と二言三言を交わしては、乳房や臀部を鉄と鉄の棒の間に押しつけるよう要求し、彼らの身体を見定めていた。
「何かお探しですか」
「緊縛の練習台が欲しいの。恋人との本番で、もたついては格好悪いから」
「そうですね。もとより、そうしたプレイはしっかりと技術を得られてからでなくては危険を伴います。13番の梨華や、21番の美津子はいかがでしょうか。SMクラブで働いていた経験があり、知識も豊富です」
「そう。ビデオを観ながら練習するより良いわね」
着物の女が別の檻へ歩いていった。
鉄格子は三方に巡らせてあり、房内は同じセクシャルもとい品種の人間を二人一組ずつに分け、壁を立てて仕切ってある。
展示してある哺乳類に、タチのメスや加虐嗜好のオスはいない。オールセクシャル対応の人間も、既存の数に比べて少ない。地下二階、とりわけステレオタイプの人間らしい環境に、彼らは飼われているからだ。薄布ではなく、バスローブも与えられている。