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飼育✻販売のお仕事
第22章 疑惑〜不実の赤心〜
夜が明けていた。
アラームに叩き起こされることなく目覚めたりつきは、馴れ親しんだ眺めを見回した。
ついこの間、里子が可愛らしいと評価した、りつきの私室だ。
「…………。っ、……」
下半身の痛みが喉から悲鳴を突き上げかけた。身体の節々が軋んでいる。
りつきは、寝具を押さえた。
さばかりおぞましいものが潜んでいる悪寒がしたからだ。
「うっ……」
壊れた。
里子との関係ではない。りつき自身の肉体が、眠りから覚めるべきでなかったものに歪められた。
大勢の女や男が辱めた肉体は、顔や腕こそ動かせても、とても直視出来ない惨状になっていよう。
シャワー室に押し込められてからの記憶がない。ただ、今朝に限って目の周りを腫れぼったい疼痛が覆っているのは、盛大に涙を流したからだ。
伊澄に泣きつく夢を見た。
彼女とて里子らと同罪だ。それでも、伊澄におりふしちらつく影。淋しげな横顔がりつきの脳裏を掠めては、居候している手前、彼女の事情を察しないではおけないでいた。
「お嬢様」
障子の向こうから壮齢の男の声がした。
「お話がございます」
「…………」
りつきは三郎に入室を許可した。
寝具から出ようとしない箱入り娘を見るや、元執事は沈痛な面持ちをいっそう深めた。