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飼育✻販売のお仕事
第23章 全てを理解することは難しい


「りつきや結野さんの悩みが、ちっぽけに思える。……彼女達を追いつめているものなんて、私に比べて可愛いもの」



 花を聯想する髪色に華やかな装い──…りつきの佇まいを、里子のかつての雇い主もとい彼女の父親は、ことあるごとに批判している。

 実際、里子も週明け、その現場に出くわした。


 真正の主張は正論だ。

 彼のみに通じる正論は、あくまでりつき一人を攻撃する。

 人間に備わる正論とは、そういうものだ。

 そして、真正のりつきの最愛の恋人を貶める信念も正当だ。その正当は、周囲からすれば新崎家の家長の傲慢。美しい箱庭を与えられた遊び盛りの子供が、そこにいかなる呼び名をつけたところで、大人達が笑って見守るのと同様だ。

 伊澄も、運の悪い家庭にいるものだ。

 人間は、むやみやたらと性別にこだわる。何でも型に嵌めたがる、定義したがる。

 里子とてとりわけ誘惑的と呼ばれる服装を好んでいるが、女をアピールしたいのではない。虫酸の走る思いを何度もしている。


 だが、誤謬には誤謬の根拠がある。努めて反撥したところで、どちらかのためになるものでもない。



 馬鹿丁寧に周囲と向き合う。若者にありがちな過ちだ。


 口先だけの服従。

 それは盾だ。
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