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飼育✻販売のお仕事
第23章 全てを理解することは難しい
里子に会いたい。
労働は疎か、自身の身の回りの世話や家事のノウハウも心得なかったりつきをいつもフォローして、世話してくれた。餌のレシピをミスしても、掃除用具の使い方を知らなくても、嫌な顔一つしなかった。
里子がいたから楽しかった。
小動物売り場の店番であれば、一人でもこなせるようにまでなれた。
優艶で、格好良くて、異性愛者のりつきの目にも、里子は誘惑的に映った。りつきの胸は高鳴った。
里子がりつきを求める度に、母親の言いつけなどどんな力もなさなくなった。
そして、幼かった頃も、りつきを孤独から掬い上げた人──…。
里子に感じた旧懐が、ようやっと分かった。
初めて会った気がしなかった。遠い昔から知っていた。
りつきは、里子と会っていたのだ。
「心配してくれて有難う、王子」
「…………」
「昨日、残業で疲れちゃっただけなんだ。伊澄ちゃんってば大袈裟だよね。私が倒れたら王子に怒られるとでも思っちゃったのかな」
浩二の両手を包み上げて、悪戯に笑う。
憂慮に曇った白い顔も緊張をといた。