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飼育✻販売のお仕事
第23章 全てを理解することは難しい
「大好き。私のためにお仕事抜け出してきてくれるなんて、王子、カッコイイよ」
「りんりんが好きなんだから、当たり前でしょ」
「キス、して良い?」
りつきの胸と浩二のそれを、不可視の力が引き合わす。
ピンク色のストラップシューズを履いた足の踵が浮いた。金色の髪の影差す目蓋がやおら閉じる。
「…………」
「ん、……りん、……」
「っ、……んん」
距離をなくした唇を、追いかける。
りつきは浩二に腕を回して、会えないでいた日数分を取り返さんと口づける。
角度を変えながらのキスは、浩二には馴染みがないかも知れない。里子がりつきに教えたキス。
だが、りつきの唇はこうせねば洗浄出来ない。
十何本ものペニスを咥えた。名前も知らない男達の白濁を嚥下し、名前も知らない女達の指の腹に遊ばれた。唇で触れられなかったのは、彼らがりつきを人間とも思わなかったからだろう。
こんな唇で里子に会えない。
気休めでも綺麗な身体で彼女に会いたい。
「──……」
りつきは、踵を下ろした。浩二の白い顔がほのかに赤らんでいた。
「今日のりんりんは、甘えん坊だ」
「王子の唇、気持ち良いもん」
「…………」
「またね」
「一緒に行って良い?」
「さぶちゃんにご飯奢ってもらうの」
「そうだったんだ。じゃ、またメールする」
嘘も方便だ。
衝動に従って屋敷を飛び出し、今度は衝動に従って、浩二に背こうとしている。