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飼育✻販売のお仕事
第23章 全てを理解することは難しい





 志穂と別れて電車に揺られた。土曜日の夜というのに車両はどこも満席だ。酒を引きずった老若男女が、我が物顔で帰路に着いていた。



「っ…………」

 半日振りの私宅に至るや、里子は幻覚に慄いた。

「あっ、……」

 幻覚の方は、緊張した面持ちを心なしか明るめた。

「──……」

「里子さん……」

「何しに来たの」

「ごめんなさい」

「──……」

「謝って済むことじゃないって、分かってます。ろくでなしでした。お父様より、もっともっと、私がずっとろくでなしでした」

「…………」

「淋しかったんです。八つ当たりだったんです。後悔したって鈴花さんが帰ってきてくれるわけじゃない……分かってるけど、それで里子さんまで苦しめてたなんて……里子さんの大事な人に、酷いこと……私だったんですね。里子さんが、……あの時の、……」


 …──髪を結ってくれた家政婦さんだったんですね。…………


 りつきの腕が、里子に絡みついていた。

 今にまた大粒の涙をこぼしかねない仔ウサギは、この世の終焉にでもまみえた風に震えていた。
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