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飼育✻販売のお仕事
第23章 全てを理解することは難しい

* * * * * * *

 三郎は住宅街を歩いていた。


 三十年前、最後に口にして以来の男児の名前を、昼間以降、幾度となく反芻していた。

 今日ほどりつきが愛息子に重なったことはない。



 りつきは日に日に大人の女に変わっていった。

 浩二と交際して七年、周囲の意見にも耳を貸さないで強情な恋を貫いてきたりつきは、それでも無邪気な少女のままだった。


 何がりつきを変えたのか。考えるのもおぞましい。



 公園を通りかかった時、不意に見知った影が見えた。


「っ…………」


 三郎が園内に踏み入るや、男は、否、真正は決まりの悪い顔をしかめた。


 三郎は男の隣に腰を下ろす。真正の座っていたブランコは、大の大人の体重をかけるには心許ない。



「りつきは、元気にやっているかね」

「──……。ご心配を?」

「他所様のお宅に厄介になっているのだ。新崎の娘ともあろう者が……見苦しい真似をしていないか、夜も眠れん」

「…………」



 十四年前、真正は配偶者を持つ人間としてあるまじき行為に耽っていた。

 使用人達と同様、幼かった令嬢も子供心ながらに勘づくものがあるようだった。

 りつきも、真正に白い目を向けていた一人だ。
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