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飼育✻販売のお仕事
第23章 全てを理解することは難しい


「私は……どうすればりつきに解らせてやれるだろうか」

「と、申しますと?」

「あいつのやりたいようには、させてやりたい。親として当然だ。しかし、親には子供を守る責任がある。私はりつきが心配なのだ。あいつは素直で、それ故に考えが浅い。社会がどんなものか分かっておらん。世間とは、建前がものを言う。あいつがいくら正直者でも、あんな髪やなりをしていたら、世間はあいつの味方をしない。あいつが正しくても、だ。その上、あんな男と一緒になって、りつきが幸せになれると思うか?お前が経営者なら、高校卒業の若者に信頼して重役を任せられるか?」

「…………」

「馬沢くんは誠実なやつだ。しかし、わしは大事な娘をディスカウントショップの店員なんぞに渡せん。りつきは何不自由なく育ててきた。甘やかしすぎたのかも知れないな」

「…………」


 その世間とやらからりつきを守ってやるのが、真正や、そして浩二ではないか。

 三郎の中で不快な反感が煮え滾る。


 それでも、真正には真正なりの考えがある。

 三郎もかつては父親だった。今も同じだ。


「…………」

「旦那様」

「何だ、改まって」

「わたくしは……旦那様に、……お詫び申し上げねばなりません……」


 執事という肩書きがあった時分でも、ここまでの過失は犯さなかった。


 里子の素顔を知ってしまった。

 けたたましい動悸が三郎をおびやかしていた。
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