この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
飼育✻販売のお仕事
第23章 全てを理解することは難しい
「私は……どうすればりつきに解らせてやれるだろうか」
「と、申しますと?」
「あいつのやりたいようには、させてやりたい。親として当然だ。しかし、親には子供を守る責任がある。私はりつきが心配なのだ。あいつは素直で、それ故に考えが浅い。社会がどんなものか分かっておらん。世間とは、建前がものを言う。あいつがいくら正直者でも、あんな髪やなりをしていたら、世間はあいつの味方をしない。あいつが正しくても、だ。その上、あんな男と一緒になって、りつきが幸せになれると思うか?お前が経営者なら、高校卒業の若者に信頼して重役を任せられるか?」
「…………」
「馬沢くんは誠実なやつだ。しかし、わしは大事な娘をディスカウントショップの店員なんぞに渡せん。りつきは何不自由なく育ててきた。甘やかしすぎたのかも知れないな」
「…………」
その世間とやらからりつきを守ってやるのが、真正や、そして浩二ではないか。
三郎の中で不快な反感が煮え滾る。
それでも、真正には真正なりの考えがある。
三郎もかつては父親だった。今も同じだ。
「…………」
「旦那様」
「何だ、改まって」
「わたくしは……旦那様に、……お詫び申し上げねばなりません……」
執事という肩書きがあった時分でも、ここまでの過失は犯さなかった。
里子の素顔を知ってしまった。
けたたましい動悸が三郎をおびやかしていた。