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飼育✻販売のお仕事
第24章 だから貴女だけが奇跡

* * * * * * *


 里子はりつきを部屋に上げた。八日前を繰り返すように夕餉を出して、八日前を繰り返すように浴室を貸した。

 変わらずおざなりな献立をりつきはおりふし称賛して、はにかんだ。


 …──胸がいっぱいで、あんまり食べられないかも知れません。


 里子は浴室へ向かいかけたりつきの肩を捕まえて、その唇にキスを求めた。当然、受け入れられるものとたかをくくっていた里子の自負は悖られた。


 …──身体、洗ってからで良いですか。


 りつきの所望は、里子の深奥で暫し鎮もっていた青黒いものを呼び覚ました。

 だが、湯上りのりつきは昨夜とは打って変わっていた。あえかに火照った双眸に、上気した肌──…りつきをとりまくみずみずしさは、湯浴みが紐づくものとは限るまい。


「…………」

「綺麗な髪だわ。可愛い」

「…………。有難う、ございます」


 里子が入浴していた間、りつきは自ら濡れた髪をタオルで押さえていた。その分、乾きが早い。指にまといつくパステルピンクの錦糸が軽らかさを含む頃、里子のブロンドも適度に乾き出していた。


 りつきに、もっと触れていたかった。

 家政婦であった時分の里子は、りつきに何を求めていたのか。
 彼女は十にも満たなかった。愛慾と呼ぶには不備がある。だが、いずれ花開くめしべの深奥にその息差しが皆無だったと言ってしまうも、あまりに単純ではないか。
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