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飼育✻販売のお仕事
第25章 親友
二人分の朝食を調えて、二人分の紅茶を淹れた。
呼びかけても揺すっても夢の中でぐずるりつきは、キッチンから芳ばしい匂いが流れ込んできたところで、ようやっと濃く長い睫毛に縁どられた目蓋をたゆませた。
配膳の途中、ふと、里子の胸裏に彼女と同じ屋根の下に起臥している少女が過ぎった。
「…………」
一人で過ごすことの長かった部屋のテーブルは、いつになく丁寧に盛りつけたプレートが並んでいる。
意図せずも、映画やドラマに見かけるような女の気分が里子をさらった。
里子のよく知る中性的な従業員は、毎朝、毎晩、こうした心地を味わっているのか。
それとも、最近はりつきの元執事を名乗る男が、伊澄の仕事を奪っているのか。
恋人のようにテーブルを挟んで朝食をとった。
会話を進めるのは決まってりつきだ。里子はりつきの話に頷き、笑い、おりふし感想を挟んだ。
パステルピンクのツインテールにプラ製の羽根を飾ってぬいぐるみ柄のAラインワンピースでめかし込んだりつきに、昨夜の凄艶な名残はなかった。ただ、里子が片付けている途中、大きな瞳はちらちら流し台を盗み見ていた。
通勤途中、何度も触れ合いかけては離れていった、里子の手とりつきのそれは、まるで二人のけじめだ。少なくともりつきに浩二を見切るつもりはない。