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飼育✻販売のお仕事
第25章 親友
「また喰ったか」
掠れたメゾに振り向くと、志穂のもの言いたげな顔があった。
「……りつきは?」
「調理場。安心しろ、飯が出来てもあたしが戻るまでワゴンに置いておくよう言ってある」
「心配なんて、してないわ」
里子は小動物の餌の準備を続ける。
今朝は、志穂とりつきが地下の業務をしていた。
地下一階はともかく、地下二階へりつきを単身行かせては何が起きるか分からない。タチやオス達も本気で危害を加えることはなかろうが、何分、りつきは些細なことでも怯える。
「新崎本調子だな。里子も綺麗になったことで」
「からかわないで」
「惚れてるくせに」
「──……」
「新崎だって、お熱だろ」
里子の真横で、顆粒が陶器に流れてゆく音が立つ。
志穂が、里子の作業を手伝っていた。
「残念ながら」
昨夜の閨事が嚮後に続く見込みはなかった。
三日も経てば、りつきは、けだしまた里子に惚気話を披露する。里子は強情な父親に関する愚痴を聞き、浩二を罵る彼の批判に同調するのだ。
たった一人で構わない。
里子には、志穂がいる。愛だの恋だのに紐づく関係ではないにせよ、里子が必要としている時、志穂こそいつも側にいた。
鈴花とはぐれた夜、里子は志穂に居場所を求めた。世界にただ一人きり、果てない夜陰に消え入ってしまわないで済んだ。新崎の屋敷を去る時も、志穂は里子に付き添った。