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飼育✻販売のお仕事
第25章 親友
「……春日さんは、伊澄ちゃんの方が好きになってないかな」
「そう思う?」
「それでもまだ益口さんも好きだったら、伊澄ちゃん、春日さんをずるいと思う?」
焦がれて求めて愛した人と、出逢って間もない人をかけた天秤。
重力をなくした二つの皿は、いつまで揺れていることを見逃されるのか。
「仕方ないよ」
伊澄の声は、ともすればりつきを宥めるような調子があった。
「一対一の恋愛関係。それを正当化してきた結果、最後まで幸せだったやつって、どれだけいる?捨てられるんじゃないかって不安になったり、余所見してそれ以上に恨まれたり。傷つけたり、束縛したり、ねじれたり。愛情と履き違えた独占欲に駆られているより、オレはそういうとこ適当な恵果さんが好きかな」
「…………」
「その点、りんは生真面目だけど。店長は色々責任とらせなくちゃだし、オレはりんのしたいことを応援するし協力もする」
…──家出の理由が店長になっても、りんはりんだ。
「──……」
りつきの両手からティーカップが抜け出ていった。
伊澄の持ち上げたポットから、一杯目に比べて熱の減った鼈甲色の液体が、カップに流れた。
りつきは伊澄に礼を言い、ミルクジャーから紅茶をショートケーキに変えるエッセンスを注いだ。