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飼育✻販売のお仕事
第25章 親友
* * * * * * *
りつきが帰っていったあとも、里子は何度、意識の干渉し難い胸裏でその名前に呼びかけたことか。
しとやかな指の質感を手のひらに刻み、りつきに最も似合う配色──…パステルピンクとホワイトの毛並みを撫でた直後、里子に、もう彼女に焦がれる本能が芽吹いていた。
「ちょっと妬きます」
里子が鏡を覗いていると、後方から、悪戯めいた声が聞こえた。
閉店後の更衣室は、里子とまおの貸切状態だ。志穂は地下二階で人間の食器を洗っている。
何故。里子がまおのはかなしごとに付き合う疑問形を投じると、同じく着替えを終えた従業員から息を吸った気配がした。
「店長、心ここにあらずですもん。ううん、いつも通り真面目だけど、ふわふわされてる感じです」
「そう?」
「小葉さんと雑談されたら、新崎さんのことばかりでした」
「──……」
「四時間前、離れたばかりなのに。私じゃ満足出来ません?」
まおの口調は、あくまで親しい人間をからかうそれだ。
ただ、的確だ。まるでそう呼びあうようになったばかりの恋人達同様、里子にりつきが足りなくなるまでにかかる時間は、甚だ儚い。
「田口さんとりつきでは、柔軟さが違っているわ」
「そんなにはっきり仰らなくてもー」
「貴女が一番分かってるでしょう」
「…………」
小動物売り場からけたたましい音が鳴り出したのは、突然のことだ。
ドンドンッ……ガシャッガシャァァッッ…………
「…──!!」
滅多に色を変えないまおの顔が慄いた。