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飼育✻販売のお仕事
第26章 再会〜感傷は知られざる悲願の〜
かの令嬢は幸福な恋人達の蜜月に、ある日突然、割り入った。
…──親の言いつけで、彼女と婚約したんだ。ごめん。
鈴花の誠実な恋人は、ただ一晩を境にして、全くの他人を生涯のつがいと呼ぶようになった。
鈴花は勉学に打ち込んだ。甲斐あって、そこそこ名の知れた大学に進み、そこそこの企業に入った。
そうした環境下、鈴花の身辺には家柄はともかくおそらく真正の器量に匹儔する男達は掃いて捨てるほどいた。
だが、彼らは景色も同然だった。景色にも及ばなかった。
戸籍という刃に引き裂かれ、添い遂げられる望みも断たれた男の面影をただただ引きずり、陰鬱とした歳月をもて余した。