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飼育✻販売のお仕事
第26章 再会〜感傷は知られざる悲願の〜
ある正月、鈴花は帰省先で真正と再会した。
善良な一家のあるじは、かつての幼馴染であり恋人であった女が愛慾をこじらせていることなど露知らず、昔のように散歩に誘った。
鈴花が真正を閨に引き込むことは容易かった。
黄昏も落ちきらない夕まぐれ、幼かった時分の二人が勉強机に向かっていた鈴花の私室で、他人同士は八年振りに恋人もどきの遊戯に耽った。否、鈴花の肉体が真正のそれを知ることは、初めてだった。
(身分違いで捨てられるなんて……傷ついたのよ。今時、こんな時代に)
(悪い。…………)
(そう思っているなら)
政略結婚に結ばれた愛は儚い。
鈴花は自然な愛をもってして、真正の赤心を手繰り戻した。
真正の慚愧は、鈴花からしても存外の範囲に達していた。鈴花に家族に与えるような一軒家を与え、一切の生活を支援した。
鈴花は小動物を好いていた。真正を忘れられる気慰みを模索していた時分、多くの趣味を得ていた。真正は鈴花の拾ってきた小動物らの面倒を見られるだけの環境を整え、鈴花の楽しむことをさせた。
娘時分を陰気に染め上げた男への報復。あり余る金銭を思いつく限りに巻き上げるという鈴花の思念は、いつしか愛の口実でしかなくなっていた。
鈴花は真正を愛していた。そして真正も、贖罪を口実に鈴花に会うことを望んでいた。
世間が不均衡だと決めつける二人の愛情は、やがて風聞になった。