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飼育✻販売のお仕事
第26章 再会〜感傷は知られざる悲願の〜
あの日も鈴花は、使用人らの風刺の材料に貶められていよう恋人を案じながら、のんびりと茶会へ出掛けていた。
いくらか気分は良くなった。
帰路を辿り、二十代の女が一人で暮らすのには些か豪勢な一軒家に帰り着くと、覚えのないその女はいた。
新崎の奥方が遣わせたのだ。
直感が鈴花に警告した。
鈴花は女を部屋に上げた。
茅中里子。
挑発的な装いに媚びた肉体を包んだ家政婦は、気構えていたより柔和だった。茶を振る舞い、花を見せ、ピアノを弾いてやったところで、里子は尋常でない感動を示した。
小動物らは里子に懐いた。鈴花は里子に、真正との関係の断片を話した。
(彼とは昔、近所だったの。私は庶民なのに楽しいことが大好きで、動物なんて育てられる甲斐性もないくせに……この子達も放っておけないものだから)
嘘ではなかった。
里子がレズビアンであることは、二、三度会う内に確信が持てた。
真正を愛している一方で、鈴花は彼の安寧も護っていたかった。
鈴花は里子に都合の良い話をすり込むことを思いついた。里子を屋敷で真正の有利になるよう動かすべく、鈴花は美しい悲恋の話を披露した。
目論見通り、世間知らずな家政婦は、鈴花に同情的になった。手懐けやすかったばかりか、鈴花を愛しているとまで言った。やはり目論見通りだった。
ただ一人の男と穏やかな時を過ごす。
そのためであれば、恋敵の飼い犬に組み敷かれることくらいはとるに足らない代償だった。…………