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飼育✻販売のお仕事
第26章 再会〜感傷は知られざる悲願の〜
* * * * * * *
「そう、私が里子に身も心も許したのは真正のため。貴女の報告のお陰があって、あの泥棒猫もおとなしくなった。新崎の家内も所詮はただの箱入り娘。家政婦を疑おうなんて、考えにもなかったでしょう。そして使用人達は手放しの噂話こそ楽しんでも、真正を心底侮蔑することもない」
胸にかかる長さの雲鬢、明るく知性溢れる人となりを物語った双眸に、穏やかで無邪気な表情(かお)をいくつもつくり出す目鼻立ち──…晦冥から現れたのは、鈴花だった。
十四年前と変わらない。この歳月は、里子が体感していた以上に短かったのかも知れない。
優艶な手つきがしみだらけの手を労った。読み取り難い気色を浮かべた双眸が、俎板の魚も同然の女体を舐め回した。
そうしてながらに鈴花の始めた彼女自身の身の上話は、畢竟するに、里子の知る以前の彼女の真実だった。
「じゃあ、……鈴花……は……」
「里子には感謝しているわ」
はらり、と、里子の肉叢にかかった螺旋状のブロンドが、鈴花の指から流れ落ちた。
「貴女は、既成事実までつくってくれた。私は貴女の恋人だった。表向き庶民の恋人の影をつくっておけば、私は愛人だの報酬目当ての情婦だの、好き勝手な侮辱を遠ざけられた」
懐かしい人の面様と同じ、読み取れない温度を連れた指の腹が、里子の乳房の頂をさすり、微かな電流を送り込む。
「結婚って、そんなに尊い?」
しめやかなメゾが、激情的な敵愾心を訴えた。
「貴女が正妻の肩を持っていたのは、彼女の方が優れているから?」
「──……」