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飼育✻販売のお仕事
第26章 再会〜感傷は知られざる悲願の〜
「私の方が真正と人間らしく付き合っていた。ずっと彼を知っていた。家名や利害関係なんて、関係ない。神様の与えてくれた魂だけで結ばれていた。人間が勝手に築き上げてきた社会的システムに頼ることなく、心だけで。……だけど彼の両親は、私をこの人の生活から排除した。彼はそれに従った。許せなかった。それからよ……私が世間のご指摘通り、世間が面白可笑しがるように、金を巻き上げるようになったのは」
鈴花の顔には、遠い日の苦悶が張りついていた。
そこにあるのは憎しみと、言いようのないやるせなさだ。
「だけどこの人に私を囲っていた自覚はないし、私にもこの人の愛人になった覚えはない。恋人だったの。どうしようもなく愛していたの……愛しているの。こんなかたちでしか関係を続けられなかった。それを貴女は咎めるために私の前に現れた。誰もが皆、ただ家名に恵まれていたというだけで、祝福されて、式を挙げた間柄だというだけで、新崎の奥方の味方をしたの……」
里子の脳裏を、パステルピンクの子ウサギの面影が掠めていった。
真正はりつきの居場所を突き止めた。「ふぁみりあ」は、まもなく終わる。
りつきの家出の発端は、例のディスカウントショップの従業員だ。真正が、真正自身かつて強いられた役目を愛娘にも押しつけたとする。さすればりつきも彼と同じか、或いはそれにも優る苦悩に追いつめられるのか。
鈴花が生きていた。
口舌になりきらない感慨がある。だのにそうしたものを差し置くまでに、里子の中で、りつきはその存在感を主張する。