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飼育✻販売のお仕事
第6章 初出勤は人間のお世話?!
キリの良いところで掃除をやめて、里子は売り場やバックヤードの見取り図を広げ、各々の施設の説明を始めた。
風俗店経営者の子女にしては、りつきの知識は乏しい。
女の従業員が人間のオスを躾ける際、コンドームを使うこと。里子がそうした注意点を挙げた時も、男根をゴムで締めつけたりして痛くないのか、そこに重きを置いたくらいだ。
そうしている内にまた数組の客が店を訪って、餌の陳列棚に空きが目立つようになった。
里子はりつきに補充を教えた。
お店の商品って、必要になった時に神様が魔法で出してくれるんじゃなかったんですね。ストックの入った段ボールを見るや、染み入った様子で感動を訴えたりつきに対し、里子も免疫というものがついてきた。
はかなしごとに脱線しながら売り場を整え、仕事がひと段落つくと、里子はりつきが好きだというウサギを抱かせた。そして、自分も一番贔屓にしている動物なのだと彼女に話した。
「飼うのが難しくて、連れて帰る勇気はない。知識をつけて、いつかは……と思うわ」
「ここで飼えてるんですから、店長が飼ってあげたらウサギさんだって幸せになれますよ」
「志穂が世話してくれているだけ。彼女、昔は猫カフェで働いていたの。猫には人気の店員さんだったらしいんだけど、あの外見でしょ。子供や中高生の女の子が怖がっちゃって、店に居づらくなったんだって」
「ひどーい」
「辞めることないのにね。それから暫くは別の職場にいて、私は彼女とそこで知り合った」
丸椅子に腰かけ、里子はグレーの毛並みをからかっていた。
ほんのり重みのある体温に、しっかり立った二本の耳。
これがパステルピンクであれば、まるでりつきだ。
小動物の目は清澄だ。
このウサギも例に漏れない。透明なブルーサファイア。こうも醜い世界にいても、動物達は懐柔されない。本能の赴くまま生きて、所有され、野生であればどこまでも駆ける。