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飼育✻販売のお仕事
第6章 初出勤は人間のお世話?!
「新崎さんは?聞いた感じ、おうち、室内温度も常に快適みたいじゃない」
「お母さんがウサギさん嫌いで……。やっと引っ越せたと思ったら、マンションだし」
よくある話だ。
おまけに伊澄はりつきと違って堅実だ。家を空ける時間帯まで、ペットのために冷暖房をつけたままにしておくタイプではなかろう。
「そうそう、志穂や私が休んでる時、何かあったら連絡してもらうための携帯電話があるの」
「わぁ、便利ですね」
「これなんだけど」
「ふぇっ?!」
りつきの膝から白いウサギが転げ落ちかけた。
大きな赤目に引けをとらない、無邪気な瞳にまたぞろ衝撃をきたしたのは、折り畳み式の携帯電話だ。
「これ、何ですかぁ?」
「ガラケー……」
「えっっ、天然記念物!こんなに貴重なの、店用にしちゃもったいないですぅ」
「──……」
里子の予感は的中した。
りつきは、電話会社の直営店に足を運んだことがなかった。
「高校までは送り迎えだったし、お休みの日も待ち合わせ場所までは車で……。電話したい時も執事がかけてくれていたので。ガラケー、伝説じゃなくてまだあったんですねぇ。スマホの機種変?欲しい色と容量を言って、家の人にやって来てもらってましたぁ」