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飼育✻販売のお仕事
第27章 真相、そして真相
* * * * * * *
久遠に等しげだった濡れた時間は、実際、どのくらい続いていたのか。
傍観を打ち切った恋人の声に従って、鈴花は里子の身なりを整えた。
深更、哺乳類達の収容所に、紺色の制服に身を固めた公務員らが押しかけた。
彼らが里子に言い渡した罪状は、略取誘拐だの風俗法違反だの、概してそうしたところである。
里子の身に何が起きたか、表層は小綺麗な罪人に関する想像を巡らせるには、彼らには余裕がなさすぎた。警官達は里子の両手首を重厚な金属に羈束して、おざなりな目隠しを被せた。
里子は警官に引き連れられて、久しく長月の外気を浴びた。複数の警官達は残り、檻の中の被害者達にとりかかっていた。
「里子さんっ!!…──里子さん!!」
「お嬢様、なりません、お嬢様っ……」
遠い来し方、聞き覚えがある。それでいて幾らか黄みの薄れた声は、幾分、里子を正気に戻した。
執事の制止を振り切って、りつきが警官達の波をかき分けた。
「──……」
りつ、き…………。
ひとりでに動いた唇は、果たしてその名前をささめけたのか。
里子の腕に、手錠とは相異なる重みが乗った。
「里子さん……」
たった一枚の繊維の壁が、里子にりつきの手のひらを伝える。
「──……」
伏せた睫毛に顫える唇、りつきをとりまく情感は、里子の奥深くで怯える何かしらのそれと呼応しているようだった。