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飼育✻販売のお仕事
第27章 真相、そして真相

* * * * * * *

 動物愛護者達の間で高名だったペットショップの裏の事業は、地方新聞の片隅に慎ましく報道されただけだった。

 真正が圧力をかけたのだという。そればかりか、彼は「ふぁみりあ」にあった志穂やまおの履歴を消した。もとより真正はりつきにまで捜査の手を及ばせないよう、里子と交渉したまでもなく、従業員のデータは消去するつもりでいたらしい。

 伊澄が三郎に聞かされた話だ。



「ただいま」

 現実味を帯びたアルトが、りつきの思考に割り入った。

 とりわけ集中していたわけでもない、学生の時分に一通りは観ていたテレビドラマを流していたブラウン管から、りつきは同居人に振り返る。


「お帰りなさい、お疲れ様」

「まじ疲れた。事務職に志望動機とかなくね?金稼ぐためって言ったら、ならウチじゃなくても……とか食い下がってきたんだぜ」

「旅行会社の時は、何て言ったの?」

「出かける時は一番重宝している会社だって言った」

「そっかぁ、……」


 伊澄が今日従業員の面接に挑んだのは、健康食品会社の通信販売事務だ。主に高齢者向けの製品が揃った企業に、二十代前半の少女が愛顧を表明したところで嘘は明白だろう。



 里子が検挙されて五日が経った。

 検察側が彼女の逮捕を遅疑しているのは、重要参考人と関係者の証言に食い違いがあるからだ。

 里子は、地下で飼育していた人間達にも刑事責任が問われないようにと考えたのか、彼らの身柄を無理矢理拘束したのだと主張している。だが、恵果らVIP会員や売り物達は、黙秘を決め込んでいた。ただ、幾日にも渡る乱行パーティーをしていただけ──…そうした証言をする者もあるようだ。


 りつきは一日中テレビの前に膝を抱えて、恵果達と連絡をとり、里子の様子を推測していた。伊澄は「ふぁみりあ」に調査が入った昼から、毎日のようにどこかしらの面接へ出かけている。真正がりつきを連れ戻そうと動いている気配はない。おそらく、伊澄と三郎が中間に入ってくれているのだ。
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