この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
飼育✻販売のお仕事
第27章 真相、そして真相



「りん、大丈夫?」

「…………」


 頷けるだけの気力はない。

 りつきの手のひらに、未だ里子の手の質感がこびりついて離れない。



 仄かにぬるい、透徹な新涼がまとわりつく深更に、りつきは最後に里子の手を捕まえた。


 いつだったかテレビの中の作り話で見た通りの光景だった。

 世界が寝静まるのをものともしない、色消しなヘッドライトが夜陰を殺め、手錠をかけられた犯人が、パトカーへ引き連れられてゆく。


 布越しに握った指先は、愛おしすぎた。

 
 里子の痛みは、今やりつきに移ろっていた。



 彼女が今でもどこかに存在している。この事実が耐え難い。



「里子さんの手……好きだった」

「──……」

「触れられただけでどきどきするの。握ってると……幸せで壊れちゃいそうになる」


 そして、…──あの質感が体内に進み入ってくる瞬間、りつきは天国より崇高な花園へ昇っていった。


「鈴花さんは、里子さんを利用していた。だけど私は、里子さんを愛している。里子さんは、鈴花さんのために苦しんでたの。鈴花さんの死を受け入れられないで、実際、あの女は遠い田舎でのんびりと暮らしていたのに……里子さんは、十四年もずっと、鈴花さんのために……」


 十四年前の自分自身でさえ許せない。里子が許しても、りつきはりつきを許せない。

 あの時、もっと想像力を働かせていられたら、或いは里子の今は変わっていたかも知れない。

 そこにりつきがいられたかは分からない。それでも里子は、今よりは穏やかな日常の中にいられたのではないか。


 去り際、里子はりつきに浩二と仲良くするよう言った。

 あれが本心だと信じたくない。もとより信じてなどいない。



「…………」



 里子に、会いたい。りつきを動かす衝動は、いつでも里子がもたらしていた。
/268ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ