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飼育✻販売のお仕事
第28章 贖罪

 重要参考人を一時的に拘置する独房は、里子を苛む類の雑念を幾らかやわらげた。

 朝夕、胸裏が追うのは、パステルピンクの仔ウサギの面影、表情、声、仕草だ。二度と触れられない存在感は、けだし十四年では済まされなかろう喪失に等しいのに、里子に無辺の安らぎをもたらす。


 検事達は、熱心に、執拗に、里子を取調室に連れ出した。

 無機的な鼠色の箱の中で、譎詐にまみれた真実を見極めんとする公務員らは、被疑者の耳を辟易させる。里子は、検事らの詰問を聞き飽きていた。

 そう、彼らの求めるまことは嘘偽りというヴェールをまとう。



「康川のぞみに確認がとれた。覚えはあるな?」

「ええ」

「お前に拉致された覚えはないと言っている。アングラサイトでペット募集を見たそうだ」

「そういうサイトは見つからなかったのではないの?」

「ぅっ……」


 しかつめらしい、黒い短髪にチャコールグレーのスーツに身を固めた検事の顔に、苦虫を噛み潰したごとくの面相が張りついた。



 「ふぁみりあ」の捜索に入った検事らによると、志穂達の履歴は論をまたず、オフィシャルホームページも消えていたのだという。残っていたのは、善良なペットショップとしてのウェブサイトだ。

 そして、ポップや発注書の一部も持ち去られていた。欠けていたのは五分の一、つまり丁度「ふぁみりあ」ほどの規模の販売店に属している従業員数全体から比較して、一人分の痕跡だけが、バックヤードから払拭されていたのである。
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