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飼育✻販売のお仕事
第28章 贖罪


「ウェブ上のデータを復元するも、物証を掘り返すも、刑事事件が関わっていれば造作ないんじゃないの?わざわざ私に訊かなくても、やれるものならやれば」

「それはだな……」

 彼らにそこは踏み込めない。「ふぁみりあ」はかたちばかり捜索され、有力な実業家の許可した人物だけが、かたちばかり聴き込まれているからだ。


「茅中さん」

 隅で緘黙していた老齢の男の温厚な目が、細まった。

「このお話は、胸に仕舞っておいていただきたいのですが」

「話によるわ」

「我々は、貴女に罪があるとは思えない。調査を進める内に、貴女に感謝している人間しかいないことが分かりました。特に春日恵果に関しては、その……」

「山田さん」

「新崎様の、……否を……主張しております……」

「山田さん!」


 若い検事が血相を変えた。



 里子の罪過は変わらない。

 人間達を強制的に檻に入れたか、彼らが自ら入ったか。後者を明らかにしたところで、嗜好品としてではない、養子として新たな家族に歓迎された人間達や、使用人として職にありつけた人間達の日常まで、無闇に奪い上げられるだけだ。

 検事達を遅らせて、その隙に里子を怨嗟に蹂躙した。真正と鈴花の五日前の共謀も、訴えたところで不幸な人間が増える以外に何も起きない。


 なくした愛を──…もとよりなくせさえしなかった愛(まぼろし)を、取り戻せる術はない。



「山田刑事、大変です」

 不体裁な足音が、駆け込んできた。山田と部下が、喧しく扉を開けた主を睨む。


「……真犯人が……首謀者が、現れました……」


「何のことだ」

「茅中里子は無罪です。小葉志穂と名乗る女が、彼女の名を騙って「ふぁみりあ」を運営していたと自首してきました」

「っ…………」



 それから二時間と経たない内に、里子の身柄は解放された。

 取調室での志穂の話は、今度こそ恵果らのと一致した。

 検事らが里子の言い分に耳を傾けることはなかった。新崎の力と法との間で板挟みになり、捜査は難航していた。彼らも、参っていた頃だった。
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