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飼育✻販売のお仕事
第28章 贖罪
人当たりが良く、稀に見るほどの顔かたちではなきにせよ、そこはかとなく凄艶たる雰囲気をまとう同僚は、身のこなしも庶民らしからぬものだった。
優雅な里子は、とりわけ同性に人気があった。態度さえ改めていれば、男にも好評だったのではないか。
だから初めは、志穂は里子に恋人か、遊び相手でも出来たのかと思った。しかし違った。雑踏で志穂が見かけた里子と一緒にいた女こそ、若奥の恋敵だったのだ。後日、真正の洋服を洗濯かごから出した時、ポケットに井靖鈴花の写真を見つけて分かったことだ。
他人の空似か、偶然か。
志穂は、里子の後をつけるようになった。良心に咎められながら、それでも志穂は、里子に直接、確かめることは出来なかった。
里子がりつきを気にかけていた所以もある。
人の好い同僚のことだ。懇ろな女が、可愛がっている小さな子供を不幸に追いつめた張本人だったとする。里子がそれを知った時、その胸中を想像すれば、容易に踏み込めなかったのである。
だが志穂は、里子を買い被っていただけだった。幻想をいだいていただけだった。
里子は鈴花の素性を知った上で、彼女を愛していたのだ。
はらわたの煮え繰り返る思いがした。
鈴花が幸福になってはいけない。鈴花の幸福が真正の手によるものでなくても、生涯、あの女は陽の当たる場所へ行ってはならないのだ。
同じ主人を敬愛して、同じあるじに誠心を誓っていた。里子のとった行動も、志穂には許し難かった。
…──旦那様。あたし、見ちゃいけないもの見ちゃいました。
真正はやさぐれた家政婦の話に食いついた。