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飼育✻販売のお仕事
第28章 贖罪
「お前だけなんだ」
「え……」
「何度も言ったよな。お前だけなんだ、あたしを見かけで判断しなかったのは」
「…………」
「奥様の他に、タメじゃ、お前が初めてだったんだ……」
「──……」
同僚として親しくなっていった二年間、それから友人として、起業した仲間として連んでいた十四年、楽しかった。だからお前は自由になれ。
それが志穂の言い分だ。
里子とて志穂ほどの友人はいない。志穂の思いをまるきりそのまま返したい。
うわべの愛想だけでふれあい、孤独とは無縁の人間を演じるという利害関係に結ばれていた友人達と、志穂は違う。里子自身自負してきた肉体が目当てで近づいてきた女達とは、いやが上にも違う。
志穂は、いつでも本音で里子に向き合った。里子は少しも気取らないで、少しも善良な顔を繕わないで、志穂に甘えた。
鈴花の本音を知ってしまった。今になって思えば、あの時、むしろ志穂は里子の幻覚を打ち砕いてくれたのだ。