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飼育✻販売のお仕事
第28章 贖罪



「幸せなんて……ないの」

「──……」

「私には失うものなんかない。けど、志穂は違う。志穂のお陰で怪我の治った動物がいる。志穂のお陰で元気になった動物がいる。貴女に感謝している人達、……夏休みや年始には、帰りを待っている家族もいる」

「さと、こ……」

「貴女は、幸せという言葉がそうして自然に出るでしょう。だけど私にはそれが何なのか分からない。見下して、いる。暗いものしか振り撒けない。誰のところへ行けっていうの。……こんな私とりつきがいても、あの子の未来はどうなるの」

「それは、りつきが決めることだ」

「…………」

「フラれたら、泣きにこい」

「…………」

「あたしなんか、もう信用出来ねぇだろうけど。あの夜、……鈴花が消えて、里子の側にいたのは面白可笑しかったからなんかじゃねぇ。お前が大好きだったからだ」

「…………」

「さよなら。里子」


「や……待っ……」



 志穂が面会終了を告げた。

 検事らが志穂を奥へ連れてゆく。里子は叫ぶ。だが、さんざっぱら操作を混乱させた人間など、職務妨害を咎められなかっただけでも感謝すべき立場である。



「いやっ!!志穂!!志穂!!」



 窓口を叩く。警官達が里子を捕らえる。

 家族や友人、恋人は、身内が容疑をかけられれば、辛い思いをして当然だ。


 白々しい常套句を並べ立てて、警官達は里子を宥めた。そして、塀の外まで送り出した。
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