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飼育✻販売のお仕事
第28章 贖罪
「結野ちゃんが次の職場を探している間、りんりんはずっと引きこもっていたんだってね」
「伊澄ちゃんに……聞いたの?」
「柚木さんだよ。今朝のりんりんを見て確信した。……休めなかっただなんて嘘だよ。家の前まで行ってた。けど、柚木さんに止められたんだ。お嬢様は誰にも会いたがっていないって」
「…………」
「いつから?」
「ごめんなさい……」
「りんりん、女性には興味ないって言ってたよね?」
「…………」
「嘘だったの?」
「──……」
女に興味はない。
いつか、確かにりつきは明言した。
同時に男にも興味はなかった。
浩二だから好きになった。里子だから好きになった。
恋人の性別は重要だ。そうした人間は珍しくない中で、りつきは例外だった。
だのに浩二は、自分が男であればこそ、りつきを繋ぎとめられるとでも思っているのか。
「女の人にも、男の人にも興味ないよ」
「何、言って……」
「ごめん。王子。今の私は里子さんが好き。黙ってて、ほんとにごめん。王子と過ごした六年間、幸せだった。楽しいことばかりだった。里子さんは、その辺、負けてるかな。でも私──」
「言い訳なんか聞きたくないよ!!」
「っ……」
「何だよそれ。別の人間を好きになったから許せ?しかも女?りんりんさ、同情ならやめな。あの店長、どうせわけありだろう?りんりんみたいに素直で良いとこのお嬢様には見透かせないだろうよ。ああいう人は、人を人とを思ってもいない。何があったかは知らないけど、そういう感じだ。りんりんはつけ入られたんだ。……第一、君のお父さんはどうするのさ」
「王子には関係ないでしょ?!離して!私は里子さんに会いに行くの!!」
「りんりん!!」
午前十時の住宅街は、人の気配がまるきりない。会社や学校は始まっている頃だ。