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飼育✻販売のお仕事
第29章 ペットになりたい
りつきは里子に口づけた。たどたどしく、不器用に。
いとけない唇は里子の唇に触れては離れ、離れては触れてを往来し、やがて舌先が頑なな花びらをこじ開ける。
「ん、んん……」
「里子さん、……」
ん、ふ、……と、貪るように里子にキスを与えるりつきの唇が、釁隙から呼吸をこぼす。
彼女らしからぬ甘やかな声だ。里子の腕を押さえつけているだけで、唇を啄んでいるだけで、劣情も極限に近いのではないかと勘ぐるくらいだ。
互いの無味を分け合った。里子は貝のようになめらかなりつきの歯列を撫で、舌をしゃぶり、おとがいを伝う僅かな一滴に至るまでその体液を味わった。
「私、も……王子を愛していました……。心から、……」
心から愛していました。大好きでした。
薄紅のシャドウの中央で、煌めく瞳が苦々しげにすぼまっていた。
「だから、里子さんが鈴花さんを愛されていても……私には何も言う資格はありません。そんな風に愛されていた、鈴花さんが羨ましい。鈴花さんになりたいくらい……羨ましい、だけです。だけど鈴花さんが里子さんにあげられなかったもの、私は、一生かけてでも頑張って……里子さんを一人にしないように、頑張ることは出来ます……」
「りつき……」
「信じて下さい。無理ならそれでも構いません……私のこと、一緒にいるのも鬱陶しいくらいじゃなければ……側に……いて下さい……」
「…………」