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飼育✻販売のお仕事
第29章 ペットになりたい
居場所を探し求めていた。うわべの友愛、うわべの愛慾に満たされながら、それでも里子は鈴花という存在に出逢うまで、孤独だった。
幸福など幻想だ。
当然だった。
りつきの持論に基けば、幻想はかたちを持たないからだ。見出す目によって、それは幸福にもなり不運にもなる。
鈴花を想って毀れることを望んでいた。積み重ねる罪悪──…罪悪的な行為さえ、里子にりつきと巡り合わせる材料になった。終焉への道のりの先に、りつきはいた。志穂達もいた。
そこは里子の居場所ではなかった。希望だ。
「私は貴女のように清らかじゃない。疑り深くてひねくれていて、貴女のことだってどこまで信じているか……分からないわ」
「そういう里子さんが好きです」
「貴女のこと、ペットとしか思っていないかも知れなくてよ」
「十分です。里子さんみたいに優しくて、綺麗な人に飼われる子がいたら……私、多分、妬いていましたから」
「愛してる。好きよ。りつき……」
りつきの目が細まった。現実にいながら暢気な夢でも見ている顔だ。
「そう言ったら、また貴女のお父様は反対されるでしょうね」
「いいえ、……」
パステルピンクの頭が左右に動いた。
綺麗に結われていた髪は、所どころが逆毛立っていた。
里子はとりわけ目立つところに指先を沈め、労わる手つきで押さえてゆく。
「私が里子さんを守ります。お父様にもさぶちゃんにも……誰にも、里子さんと私の想いを踏みにじらせません」