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飼育✻販売のお仕事
第29章 ペットになりたい
* * * * * * *
神無月に入って数日経った夜、里子はりつきと町屋のカフェを訪った。
そこはかとなく時代に置き去りにされたかび臭さが染み込む木造造りの空間は、遠くにフレグランスが華やぐ。妄りがましい息差しが、階上からこぼれ出ていた。
「いらっしゃい、茅中さん。りつきさん」
二階に至った扉の向こうに、今宵の宴の主催者がいた。
レイヤードの茶髪に流行りの化粧、フェミニンな侠気ほのめくドレス姿の女は、里子達を砕けた微笑みで迎えた。彼女、恵果に、里子の隣でパステルピンクのワンピースを腰からふわりと広げたりつきの同居人が付き添っていた。
「お招き有り難う」
「こちらこそ、来て下さって」
「お久し振りです、店長」
「……その呼び方、何とかならないかしら」
「ウチはこういう主旨だけれど、気軽に寛いでいって下さいね。私達も、彼女達が楽しむのを観賞しながらゆっくり過ごすつもりだから」
恵果の優艶な両腕が、伊澄の腕に絡みつく。
短い黒髪に深緑のポロシャツにデニムジャケット、タータンチェックのスラックスという、相変わらずカジュアルな風采の元従業員のかんばせに、はにかんだ気色が現れた。
三十分ほど経つと、会場はさばかり賑わっていた。恵果は開会の挨拶をして、引き続き使用人らに給仕の役を与えながら、淫らな企画を進めていった。