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飼育✻販売のお仕事
第7章 飼われるさだめ
「なぁ」
「ん?」
「何で雇ったの」
志穂が半日ぶりにエプロンを外し、着替えを始めた。
すらりとした肉体が、惜しみなく里子の目路を明るめる。
「使えなくねぇ?ピンクの嬢ちゃん」
「…………」
「それとも里子、二人が同居って聞いて、結野さん一人に稼がせるの可哀想とでも思った?」
「──……。それも、ある」
沈黙が、二人を包んだ。
志穂は着替えを終えていた。ごくあきりたりな量産品店のカットソーとスラックスでも、彼女がまとえば様になる。
「似ていると思わない?……あの子」
「──……」
「志穂」
「ん?」
「人間が最も心地好い状態って、知ってる?」
「寝てる時」
里子は、ポーチの中のレジンチャームを見つめていた。
ゴールドフレームは所どころが黒ばんでおり、かつて色とりどりの封入材を透かしていた透明樹脂も、歳月を感じさせるくらいには黄みがかっていた。
「首輪に繋がれている時」
「…………」
「人間は、飼われることを好む。相手が人であれ不可視の力であれ、何かに自由を抑えられていなくては、安心して眠れもしない。そうじゃない?」
「…………」
帰りましょ。
里子は荷物を持ち上げる。
従業員らの帰っていった後の店を志穂と渡り、夜闇に出て施錠した。