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飼育✻販売のお仕事
第8章 少女給餌〜りつき〜
「お嬢さん達の前の従業員さんは、一人が女で一人が男。社内恋愛ってやつになったみたいでね、店長とこじれて辞めたの」
「三角関係?」
「ううん。店長、更衣室で二人が抱き合ってるのを見かけたらしくて。以来、あからさまに気持ち悪そうにしてたんだって。そんなつもりはなかったんでしょうけど」
「──……」
りつきは萌奈に礼を述べ、調理場へワゴンを戻した。
「新崎さん、良かった……帰りが遅かったから」
「あ、その……」
「そうそう、盛りつけの仕上げ。間違えていたんだってね。今、結野さんに代わりの食糧を買いに出掛けてもらってる。普通、見れば分かるものよ。容器にタグ、貼っておくわ。次からは絶対に間違えないで」
「うぅ……ごめんなさい。どっちも色が似てたんですもん……」
りつきの背後を芳しい風が撫でた。
里子がエプロンの腰紐を結び直してくれていた。
「──……。ぁっ、……」
里子の指が、りつきのうなじにやんわり触れた。
襟も曲がっていたらしい。里子はりつきの髪をよけ、首元を軽く整えた。
「…………」
りつきは里子に従って、地上階への階段へ向かう。
職場を変えるべきかも知れない。
ふっと先行きが不安になった。
さっきの萌奈の見解にしても、根拠がない。こんな出来の悪い従業員は、早々に辞めてしまった方が里子の負担も軽減する。
それなのに、決心がつかない。
生まれて初めての労働を、伊澄と共に出来る安心感。
それにも優る情動が、りつきをここに繋いでいた。