この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
飼育✻販売のお仕事
第9章 商品調教〜伊澄〜

ややあって、給餌が終わった。
婦人から、感慨深げな息がこぼれた。
「話に聞いていた通り、刺激的ねぇ」
「地下一階の動物達は、箸やスプーンを使いません。主人により忠実な、ペットとしての自覚を持たせるためです」
「ふふ、若い頃みたいに濡れそうだわ。主人が昼に居合わせたことがあってね、お前も一度見れば良い、と、ずっと言われていたのよ」
「有難うございます。昼餉は毎日公開しております。お客様に心置きなく商品を選んでいただきたく、三食をお見せすることは控えておりますが……」
こうして話している限り、どこにでもいるありふれた女だ。しかも特定のパートナーを持つという。
伊澄は数秒、婦人を観察していた。
「お客様。何かお探しですか」
「ああ、そうなの。あのね、絶対に他言はしないでいただきたいことで……」
話によると、婦人の息子はある大会社の次長を務めているという。
ところが現代表取締役社長すなわち彼の叔父が事業に失敗、そこで以前から取引をしている企業と協定を組めば、経営を持ち直せる見込みが出た。
先方のトップは一人娘を花嫁に出すことを条件に示した。娘は以前から婦人の息子を好いており、婦人が探りを入れたところ、彼も満更ではなかったようだ。
ただし問題点がある。
息子は筋金入りの女嫌いだ。
例の娘は男気があり、容姿端麗、知性に溢れた器量故に息子の好意を僅かに惹いたが、婦人の目からすれば、それも友情に近いのだという。

