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飼育✻販売のお仕事
第10章 VIP会員限定セール〜見切り品〜
「本題に戻ると、来週は見切りセール。六月は低迷期だから、ここでセレブから収入を潤わせておかなくては。二ヶ月以上売れなかった人間は四十パーセントから半額値下げ、三ヶ月は全て半額。従業員は総出で会を回してもらう」
「そっか。それでシフト、深夜二時まで入ってたんですね」
「お前出来るかぁ?接客」
「そうね。新崎さんには昼間小動物を中心にやってもらっているから、地下のノウハウが……」
「つか、地下は結野さんと田口に任せとけって感じ?なぁ新崎。あの子、旅行会社にいた時も客相当とってたんじゃねぇ?」
「はい。伊澄ちゃんはセールス上手かったみたいです」
「会社も狂ってんな。恨みつらみで、何でそういう有能な社員を切るかね」
「──……」
「会社が……おかしいのではないと思う」
里子はスマートフォンを閉じて、出来たてのポップを拾い上げた。
明るい色のとりあわせがりつきらしい。それでいて文字やイラストがよく引き立つ。
「男は自尊心の塊なの。だから失うことを忌むのね。分別のない野生と同じ。たとえ空腹でなくっても、餌を奪われたら我を失う」
「…………」
「里子、あのさ──…」
「ん?」
「──……。……いや、……」
里子はチラシの必要記入事項をりつきに伝え、新たな画用紙を渡した。