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飼育✻販売のお仕事
第2章 ペット面接・元倒産企業事務員~里子~


「お客様のお支払いは、初回月に限って「ふぁみりあ」に全額入ります。貴女達につく売値、つまり月額のことね。ここでの生活費は当店負担、初回月額はそれを後から返金するもの考えてもらって結構です。二ヶ月目以降は、お客様が貴女達を手放す時まで、毎月、貴女達の口座に振り込まれます。……というのが基本的な月給で、人間を取り扱う地下の売り場に入場を許したVIP会員は一定の収入を超えていることが条件なので、中にはボーナスが振り込まれるペットもいるようです」

「質問、良いですか」

「どうぞ」

「さっき仰ってたペットの品種についてです。人間はセクシャルで分けられるそうですね。それは自分で決められるんですか」

「ええ。一つ注意点を言っておくと、タチとオールセクシャル対応はあまり良い売値がつかないわ」

「そうなんですか」

「身体に触れられるのは平気?あまり好きじゃないなら、たまに猫の手も借りたいお客様が、愛玩ではなく家事手伝いをさせるペットをお求めになることがあるの。そういう場合、私はタチやオール対応をお勧めしていて──…」

「いえっ、彼氏を抱いた経験がないので無理です。ネコか男性対応のメスが良いです」


「のぞみさん」


 里子は、書類の散乱したデスクに履歴書を置いた。

 目前にいる二十五歳のインテリジェンスを理解するには、こんな書面では不自由すぎた。


「そこの診察台に移って」

 何度繰り返したか分からない、業務を指示した里子の声は、里子自身驚くほど温度がなかった。

「…………。はい」

 のぞみをとりまく緊張感が、質感を変えた。

 リクルートスーツ姿の女が、里子の指示に従った。
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