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飼育✻販売のお仕事
第10章 VIP会員限定セール〜見切り品〜
蓮が店を訪った、三ヶ月前が思い起こされる。
裏社会でも悪質だと酷評の金融業の男が、蓮の実家に貸しつけた金の額を喚き、里子に肩代わりを持ちかけた。
ただし、里子が返済した金額は、担保が客に売れなければ全額「ふぁみりあ」に返還される。蓮は再び一族に押しつけられた負債を背負って、最終的には栄養剤に生まれ変わって海外に輸出されるらしい。
「あと二時間。スタッフに身体を拭かせるわ。早く泣きやみなさい」
「でも……私……うっ……」
里子は志穂を呼び止めて、蓮を清掃するよう頼んだ。
それから康原達を手伝って、佳代の羈束をといた頃、志穂が雑巾とバケツを持って戻ってきた。
「おお、健康そうな嬢さんだ」
みっともなく泣き腫らした少女の前に、小太りの男が足をとめた。
「ん?……半額のくせして高いじゃないか。あの売り場のやつですか?」
「はい」
「まぁ良い。小葉さんでしたかな。この蓮というのを見せてくれ。わしの息子も娘も親の言うことを全く聞かん。会社を継ぐやつがおらんのだ。家内は閉経ときた所以、あのメスにわしの新たな子供を身篭らせる」
「契約推奨期間は十年です。大丈夫でしょうか」
「何、家政婦にでも使ってやる。追い出したとて、使用料を振り込めば問題なかろう」
「かしこまりました。どうぞ、身体を拭きますので暫しお待ち下さい」
里子は後を志穂に任せて、康原達を出入り口付近のテーブルに案内した。
佳代の購入手続きを済ませると、彼女らを裏手のエントランスまで見送った。