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飼育✻販売のお仕事
第10章 VIP会員限定セール〜見切り品〜
「断る理由はない、か。結野さんも?」
「──……」
「私が貴女を好きだと言ったら、断らないでいてくれる?」
恵果の目は、享楽に傾倒しているセレブリティのそれに戻っていた。
もっとも、恵果は見切り品を購入する気は毛頭なかったのだろう。
まお達同様、彼女も「ふぁみりあ」の理念を支持している動物愛護家だ。ウサギ二羽と猫一匹。恵果が財布を開くのは、彼らの餌を買い求める時に限ろう。
「結野さんは、店長さんみたくなってはダメよ」
「どういうことです?」
「知人の屋敷に、えげつない失恋をした女性がいたんだって。店長さんに、お名前が似てるの。……彼女も、今頃はどこかで、あんな風に人間嫌いになってるんじゃないかなって」
それから閉場直前まで、恵果は伊澄を引き止めた。
顔色は回復していたが、大事をとって、里子も伊澄に恵果に付いていることを勧めた。
伊澄は恵果の自宅に連絡を入れた。まもなくして外車が「ふぁみりあ」の前に停まり、啓吾と名乗る彼女の弟が姉を連れてシートに戻った。
恵果は店を離れる間際、伊澄にメモを握らせた。
愛情と快楽は別物だと思うのよ。
メモには、恵果が主催を務める淫行同好会のウェブページのURLが記してあった。