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飼育✻販売のお仕事
第11章 我が家の執事
* * * * * * *
騒音は引っ越し業者によるものだった。まもなく挨拶に訪ってきた隣人は、りつきのよく知る人物だ。
「お嬢様っっ……探しましたぞ、よくぞご無事で!」
インターフォンのチャイムに呼ばれて伊澄が扉を開くなり、男は世帯主の脇に飛び込み、後方にいたりつきの両手を持ち上げた。
「さぶちゃんっ?何でっ?」
大柄な体躯とネオンカラーのスーツがりつきの目路に飛び込むや、顔を確かめなくても分かった。
柚木三郎(ゆぎさぶろう)、新崎家の執事だ。
「旦那様と、仲違いをして参りました」
「柚木さんまで?」
「りんりん、どうした?」
浩二がリビングから出てきた。
痩せ型金髪の男を見るや、たった今まで愛娘を見つけ出した父親に通じる温度を湛えていた目が血走った。
「お嬢様、まだ……この馬鹿とお付き合いをされていたのですかっ……」
「ひどいっ。さぶちゃんまであの二人の味方なの?!」
「とんでもない、奥様はともかく旦那様とは絶縁しました。よってこの三郎、目に入れても痛くないお嬢様の御為、わたくしめの意思で、この馬鹿には命を賭けてでも出ていっていただきます」
「さぶちゃ──…」
浩二に掴みかかりかけた三郎に、りつきはすかさず制止に入った。
だが、三人が衝突することはなかった。