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飼育✻販売のお仕事
第11章 我が家の執事
「終了」
伊澄の利き手がりつきの首根っこを掴んでいた。同様に、左手は、シマウマ柄のスーツの襟を捕らえている。
「──……」
「…………」
「柚木さん、誤解してない?」
「結野様……?」
「りん、浩二と別れたんだ。オレが付き合ってんの」
「…──!!」
「悪いけど、これからデート。りんは仕事だし。今日のところはいさせてやって。それと、これからよろしく。お隣さん」
りつきは開いた口の塞がらない浩二を我に返すと、伊澄と三郎に付いて部屋へ戻った。
それから四人がテーブルについたところで、奇抜な執事の身の上話が始まった。
三郎とりつきの父親すなわち新崎真正(しんざきまさただ)は、折り合いが悪い。
三郎の自慢は若々しい風采だ。明るい色を身につければ顔色も明るく見えると信じる彼は、りつきが幼い頃より派手なスーツで出勤していた。それが近年、彼のセンスは華やかさに磨きがかかり、とうとう先日、真正に厳しい注意を受けたのだという。
注意が口論に発展した。周囲の誰もがそれを重大に考えなかった。
だが、三郎は長年の鬱積が爆発し、荷物をまとめて出てきたのだった。…………
「わたくしは、お嬢様が旦那様にお洋服を注意されておいでだったのを何度もお見かけして参りました。今ならお嬢様がお屋敷を出られたお気持ちがよく分かります。旦那様はご自分で妄想なさった常識に反するものは、ことごとく否定なさいます。……つきましてはわたしくしは、本日よりお嬢様一筋で、お世話に努めたいと思います」