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飼育✻販売のお仕事
第12章 落ちこぼれ従業員の特訓
* * * * * * *
件のサロンは町屋のカフェの二階にあった。
恵果が主催しているパーティーは、大規模なものからセクシャルやドレスコードを限定したものまで千般ある。
伊澄は二週間前のメモのURLから、改めて恵果に連絡をとった。ラインでトークをしていた中で、今宵の宴を知らされたのだ。
参加資格は女性であること。そして主催者と懇ろであること──…。
かび臭いような空間は、やんごとなき女達のフレグランスに華やいでいた。妄りがましい息差しがそこはかとなく浮遊する。
「こんばんは」
「あらぁ久し振り。元気してた?」
「お陰様で。貴女は大丈夫?お兄様がお留守だと伺っているけれど……」
「一人の方が気が楽だわ。家政婦さんと四人、女子校時代の修学旅行の気分よ」
軽快な女達の笑い声とカクテルグラスの音が交わる。
伊澄が会場に踏み入るや、とりわけカジュアルな女が一人、花畑のごとく群れを離れた。
「結野さん、来てくれて嬉しい」
「こんばんは」
「浮かれた人達ばかりだけれど、皆、思い遣り深いわ。もうじき余興を始めるから、ケーキでも召し上がって待っていて」
「有難うございます。恵果さん、今日もお綺麗ですね」
「っ……、本気にしちゃうじゃない」
テーブル台の近くには、給仕の女達が侍っていた。
女達は伊澄に果実酒を振る舞い、春日家の家政婦だという二人は早速、好奇心を露わにし出した。