この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
穴を掘っている
第3章 僕
芹香との関係は案外……早く見付かった
父親は男だった
嫉妬に満ちた瞳を僕に向けた
「何を考えてるんだ!」
怒気を露わにした声で僕を叱咤した
「僕を欲しがる女が案外多かっただけさ……」
僕は馬鹿にした様に言うと……
父親は殴った
「教師も僕に股を開いたぜ?」
「………だから?」
「芹香も僕に股を開いただけだろ?」
「お前の……義理といえ母になる人だって……解らないのか?」
「僕をこの世に生み出した責任を何一つ取る事なく来た貴方の妻なだけでしょ?」
父親はわなわなと戦慄いた
「お前の……面倒は見られない……」
「なら母さんの所へ返せよ
もう大丈夫だって、返せよ
そうしなければ僕は貴方の人生を踏みにじり続けるよ?」
「……俺が憎いか?」
「憎む程に貴方の事は知らない
僕に父親はいなかったからね……
キャッチボールしてくれる父親はいなかった
夢精する年に教えてくれる父親はいなかった
母さんが連れて来る男は……
僕を邪魔にして殴り付け
父さんが連れて来る女は僕を誘った
父さん……僕は……何のために産まれたのですか?」
言葉もなく……
父親は苦悶の表情で泣いていた
「………俺が……悪かった……」
今更……謝られても……
僕の時間は戻らない
「父さん、母さんの所へ行ける様にして」
「解った…」
「父さん……僕は来年受験だから……静かな庭付きの家を……借りてくれないかな……
その家は母さんに知らせないで……」
「………お前の思い通りにするしかないんだろ?」
「………父さん……僕は父さんが嫌いでした
母さんを助けなかった父さんが嫌いでした……
母さんしかいない世界しかなかった
それが僕の世界でした……」
父親は僕を抱き締めて泣いた
「………お前の事は一日も忘れた事はない……」
「………もっと……早く……父さんを感じたかったよ…」
「………悠真……生きてくれ……」
「……父さん……生きるよ」
父親は総て僕の言う通りにしてくれた
それが最期の……プレゼントだと想う
父さん……
僕の世界に貴方はいませんでした……