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穴を掘っている
第5章 穴を掘っていた


この日、僕の掘る穴は完成する

僕の生まれた日

僕の特別な日

最期の日

笑える位に僕は幸せだ

母さん……明日から笑顔で過ごせるね

こんな息子をこの世に送り出した責任だからね……

我慢してよ

僕の逝く所は地獄しかない

裁かれ

堕ちるしかない

貴方を求めた日から……

許されぬ日が始まった

そんな日が終わる

「………18年前の今日……
貴方は僕を産んだんだね……」

罪に染まった子だなんて……

想いもしなかったろうね

僕も……

自分の母親しか求められない息子にしかなれないなんて……想わなかったよ

貴方の望む息子になりたかった




その日

母さんは約束通り仕事は休んでくれた

僕は学校を休んだ

母さんが料理を作るのをテーブルに腰掛けて見ていた

子供の頃から……

何時もこうして見ていたね

「はる君 お皿を出して」

僕は言われたとおりお皿を並べる

出来上がる料理を眺めてワクワクしていた頃が懐かしい

「美味しそうだね母さん」

「はる君の誕生日だものね」

「ありがとう母さん」

「何よ……改まって……」

夕暮れに染まる部屋は静かで

最期に相応しい紅い……夕日に染まっていた

食卓台に料理を並べて

母さんはケーキをテーブルの中央に出した

「はる君 誕生日おめでとう」

母さんはローソクをケーキに刺していた

ライターで火を灯し

「はる君 ローソクを吹き消して」

笑う母さんは子供の時に見た顔で笑っていた

思考が交差する

僕は……貴方しかいない子供で……

貴方のする事に一喜一憂していた

そんな頼りない子供になった気分だった

僕はローソクを吹き消した

母さんはお皿の上にローソクを抜いて置いた

ローソクの数は……

18本

僕は今日 18になる

明日からの僕の時間はない

刻まない時間を想う



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