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第35章 解き放された蜘蛛の糸（ときほぐされたくものいと）

　玲奈を無視したように男達の会話が続き、背中は無警戒になっていた。


「しかし、今回は何で計画したんや？まさか、財産か？まあ、どっちにしろが腹黒いやっちゃなぁ、高野。」


　探りを入れる積もりで、高野に聞いていた。


「いや、それもあるけど、まあ、こいつがボロボロになるんが見たかったんですわ。それに、まあ、こいつがいなくなったら、同情が俺にくるんでね。ふふ、別れる理由ね。ふふふ。」


「なるほど、相変わらずの悪やのう。玲奈には愛情はないってことか。まあ、これからは俺が可愛がってやるわ。けど、怖いなあ、お前。クククッ。」


（聞いてるかな？ソロソロ意識がハッキリする頃やしな。ふふ、楽しみやな。二人ともってこともあるなあ。ふふ。）


　高野の本音を引き出しながら、五郎は玲奈の答えを楽しみにしていた。
　二人の会話を聞きながら、玲奈は包丁の柄を握りしめ、ユックリと身体を起こし、冷たい銀色の光りを見つめていた。
　そして、様子を見ながら全ての元凶を見詰めていた。
　幸い、彼女のいる場所の灯りが消され、玲奈の動きは男達の側からは影になり、彼らの目からは隠されていた。


（少し音が聞こえたか？玲奈が起きたかもしれんな？ふふ、どんな結論になだたかな？まあ、直ぐにわかるわ。）


　五郎は背後の微かな音が聞こえ、彼女が身体を起こしたのを察知したが、高野には黙っていた。


「それで、これからどうするかな？新しいのを見つけてるんやろ？」


「へへっ、まあ、ね。玲奈が消えてくれたら、彼女と結婚しますわ。そのために、頼んだんですから。幸い、邪魔モンは五郎さんが片付けてくれましたからね。クククッ。」


　無責任にしゃべりながら、高野はペラペラと計画をバラしていた。
　しかし、その全てを玲奈は聞いていた。
　自分の全てを破壊した男が、目の前にいることに玲奈はキラリと光る包丁を握り音も立てずに立ち上がった。


「俺は構わんが、玲奈はどう思うかな？大丈夫か？」


「あぁ、大丈夫ですよ。あの女に、そんな根性はありませんよ。五郎さんにガッチリ調教されてますからね。ふふふ。只の牝犬に、そんなことできませんて。」


　五郎が口を開こうとした瞬間、黒い影が走った。
　えっと、思った瞬間、ギラリッと銀色の光りが走り、くぐもった叫びが聞こえた。
　ドンッ、ドスッ、と音が部屋を満たした。