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第18章 I Lesson ５回目

トックン――――

何度も言われている言葉が、胸にストンと落ちて染み渡る。

あぁ、そっか――――もしかして……。

さっきまで身体中に掛かっていた靄が、穏やかにスーッと引いていく。

「うん……無理しないように気を付けるね」

コウセイの気遣いに、応えるようにぎゅうぅと腕に力を込めた。

「何かあったら、いつでも俺の胸に飛び込んでおいで」

「それは、大丈夫」

「がーん！」

何処まで本気か分からないけど――――

きっとコウセイなら、本当にいつでもギュッと抱き締めてくれそうだ。

セイジと抱き合うのとはまた違う。

ラブカルという土俵で、一緒に戦う戦友の抱擁みたいな感覚。

もう時間もないし、身体を離そうとしたら――――

「スペシャル、ぎゅうぅぅぅぅ～！！」

「ぐえぇっ！」

最後に、力一杯抱き締められた。

「ぐ、ぐるじぃよ」

「琴ちゃん、離れるのが寂しいよ～！」

首を絞められたカエルな気分で訴えたが、コウセイは中々ぎゅうぅから解放してくれそうにない。

タイムオーバーしたら、またしてもヤナセに迷惑を掛ける事態になりかねない。

そんなことになる前に、何とかせねば！
どうするチワワ――――！？

「コウセイさん……またいつでもレッスンに付き合うから」

咄嗟に口を衝いた言葉が正解かは分からなかったけど、コウセイの『スペシャルぎゅうぅ』は解除された。

「……うん。ありがとう……琴ちゃん」

そしてコウセイは本当に寂しそうな表情で、レッスンに幕を下ろす。

沢山の不安を抱えて、ラブカルに通い始めた私を知っているコウセイ――――。

今日も私の体調を労わって、負担が掛からないようにしてくれた優しさが、嬉しかった。

「ありがとうございます。卒業レッスン、無事に終わりますように」

受付講師張りの最敬礼で、心から感謝と願いを込めた――――。