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初花凛々
第12章 空は瑠璃色
ほんのり甘くて優しい味のイチゴ牛乳を味わい、そして二人は凛のアパートへ向かう。


部屋に入り二人きりになると、急に凛は緊張してきた。


麻耶は普段と何も変わらない様子で猫のクッションを抱きしめているが、凛はとてもじゃないが普段通りには出来そうもない。


何をするわけでもなく、キッチンとリビングを当てもなく彷徨いた。


「凛」


麻耶に名を呼ばれ、凛はまた肩を跳ねらせた。


「はい」

「ここ、隣座って」


言われるがまま、凛は麻耶に従い隣に座る。


すると麻耶は、凛の後ろに回るように態勢を変え、いつものように抱きしめる。
こんなにいきなり始まるのね……と思いながら、凛はキュッと目を瞑った。


「……ねぇ、凛」


麻耶は凛の耳元で囁いた。やはり凛は麻耶に耳元で囁かれると、子宮の上辺りがずくんと痛んだ。



「パソコン教えて」

「うん……え、パソコン?」


てっきりこれから始まると思っていた凛は、拍子抜けした。


「前教えてくれるって言ったよね」

「言ったけど……今!?」

「ダメ?あ、もしかしてもうエッチの練習したいとか?」

「いえ!パソコンの練習しましょう!」

「よろしくです」


凛の気持ちは全てお見通し。そんな笑みを浮かべながら、麻耶は凛を見た。
凛は背中に麻耶の温もりを感じながら、目の前のテーブルに置いてあるパソコンを立ち上げる。
画面が表示されるのを待ちながら、麻耶は凛を抱きしめ直す。


その時。すん、と、フルーツのような香りが凛の鼻を掠めた。


「なんか麻耶からいい匂いがする」

「なんの?」

「わかんない、髪かな?」


凛が振り返ると、仕事中ではない素の状態の麻耶の顔が、すぐ近くにあった。


思わず凛の口からは、ひゃっと声が漏れる。


「ま、麻耶……!」

「なに?」

「近くって緊張する……」


これだとパソコンどころじゃないよと、凛は言った。


「じゃあ、しよっか」

「え……」


戸惑う凛。そんな凛の頬に麻耶は手を添えて、額にそっと唇を乗せる。


麻耶の肩越しに、夕暮れから夜へ向けて色濃くなってゆく、瑠璃色の空が凛の眼に届いた。











瑠璃色_____


紫がかった青


ガラスのような、青


宝石、ラピスラズリ。








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