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初花凛々
第14章 水魚の交わり
凛が麻耶に身体を預けてから、数日が過ぎた頃。
空には燃えたぎった太陽がのぼり、夏のピークを迎えていた。
その日、凛のパソコンに一通のメールが届いた。
件名:研修旅行のお知らせ
そう題されたメールを開くと、そこには十月にある社内旅行の旨が記されてあった。
凛の勤める会社は洗剤メーカー。年末の大掃除に向けて、十一月、十二月は目が回るほどの忙しさになる。社員皆一丸となり奮起するためにも、毎年十月には研修と題し、親睦を兼ねた社内旅行が催されている。
参加は任意とされてはいるがそれは表向き。特別な理由がなければ、参加はほぼ義務。
「くるちゃん先輩〜」
旅行の知らせを聞いた新山が、凛のパソコンを覗きながら沈んだ声を出した。
「今年は温泉ですって」
「そうみたいだねー」
「去年はテーマパークだったのにー」
凛は昨年の社内旅行を思い出していた。行き先は国内人気ナンバーワンの巨大テーマパーク。どこへ行っても大混雑で、うんざりした思い出しかない。
_____今年は温泉かぁ
社内の若者達は皆、行き先が温泉だという事にガッカリしているようだった。けれど凛は嬉しかった。
普段から銭湯も好きな凛は、当然温泉だと聞き胸が弾む。
「胡桃沢さん、嬉しそうだね」
「えっ」
声の方向に目をやると、そこに立っていたのは黒縁眼鏡がよく似合う広報部の若手男子_____ 藤沢 優(ふじさわ ゆう)
名の通りに、顔つきも話し方も全て、優しい男。
「優くんはテーマパークの方が良かった?」
「僕も温泉の方が良いかな」
「ふふ、仲間だね」
凛は社内で唯一、優とだけは普通に話す事が出来る。それは優の醸し出す雰囲気が中性的だからかもしれない。
「今年も旅行統括だったりしてね」
「流石に二年連続はないかも」
昨年の旅行では、凛と優は社内旅行の統括係だった。毎年、各部から一名ずつランダムに選出される。
「でもあれ、部長たちがくじ引きで係を決めてるらしいよ」
「じゃあ可能性はあるかもね……」
凛は優のことは、同性のように話しやすい対象として話している。それは凛だけでなく、以前新山も同じようなことを言っていた。
「じゃあ、もしまた係になったらよろしく」
「そうだね。もしも、そうなったらね」
二人は終始、笑顔だった。
空には燃えたぎった太陽がのぼり、夏のピークを迎えていた。
その日、凛のパソコンに一通のメールが届いた。
件名:研修旅行のお知らせ
そう題されたメールを開くと、そこには十月にある社内旅行の旨が記されてあった。
凛の勤める会社は洗剤メーカー。年末の大掃除に向けて、十一月、十二月は目が回るほどの忙しさになる。社員皆一丸となり奮起するためにも、毎年十月には研修と題し、親睦を兼ねた社内旅行が催されている。
参加は任意とされてはいるがそれは表向き。特別な理由がなければ、参加はほぼ義務。
「くるちゃん先輩〜」
旅行の知らせを聞いた新山が、凛のパソコンを覗きながら沈んだ声を出した。
「今年は温泉ですって」
「そうみたいだねー」
「去年はテーマパークだったのにー」
凛は昨年の社内旅行を思い出していた。行き先は国内人気ナンバーワンの巨大テーマパーク。どこへ行っても大混雑で、うんざりした思い出しかない。
_____今年は温泉かぁ
社内の若者達は皆、行き先が温泉だという事にガッカリしているようだった。けれど凛は嬉しかった。
普段から銭湯も好きな凛は、当然温泉だと聞き胸が弾む。
「胡桃沢さん、嬉しそうだね」
「えっ」
声の方向に目をやると、そこに立っていたのは黒縁眼鏡がよく似合う広報部の若手男子_____ 藤沢 優(ふじさわ ゆう)
名の通りに、顔つきも話し方も全て、優しい男。
「優くんはテーマパークの方が良かった?」
「僕も温泉の方が良いかな」
「ふふ、仲間だね」
凛は社内で唯一、優とだけは普通に話す事が出来る。それは優の醸し出す雰囲気が中性的だからかもしれない。
「今年も旅行統括だったりしてね」
「流石に二年連続はないかも」
昨年の旅行では、凛と優は社内旅行の統括係だった。毎年、各部から一名ずつランダムに選出される。
「でもあれ、部長たちがくじ引きで係を決めてるらしいよ」
「じゃあ可能性はあるかもね……」
凛は優のことは、同性のように話しやすい対象として話している。それは凛だけでなく、以前新山も同じようなことを言っていた。
「じゃあ、もしまた係になったらよろしく」
「そうだね。もしも、そうなったらね」
二人は終始、笑顔だった。