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初花凛々
第19章 十六夜
____どうしてそんな瞳で私を見るの____?


麻耶はまるで、子どもを愛でる親のような


そんな眼差しで凛を見つめた。


「自分はびしょ濡れになっても、後輩のために傘を差し出して。そういうところ、いい。すごく」

「……懐かしい。西嶋さんから傘借りた日のこと」


それは麻耶と凛の、始まりのキッカケだ、と今では思える。


「バランスの取れた身体にも惹かれる。それは俺じゃなくたって男ならみんな」

「……またまた」

「……マジだから。……それに、たまに無性に、この唇にキスしたくなる」


____お酒のせい?今日の麻耶はいつもと違う


凛はそう思い、麻耶から目をそらせずにいた。


段々と近づく二人の唇。


麻耶は頬に添えられた手の親指で、凛のぷっくりとした唇をなぞった。


「……私もしたい……麻耶と、キスしたい」


麻耶に見つめられるうちに、凛は心の声が思わず出てしまった。


両者共々気持ちは同じ。ならばすればいいじゃないかと、周りは思うだろう。けれども二人は。


「……でも、凛のことを思うと簡単にしちゃダメだって思うんだよね」


またそんな事を言って、と凛は思った。


「私のために、しないの?」

「恩着せがましいよな、でもそうだよ」

「どうして?私もしたいのに、麻耶と」

「……前も言ったよ。本当に好きな男に出会った時に、後悔してほしくないから」

「じゃあ麻耶は後悔してるの?」


麻耶がそう言うのだから、きっとそうなんだと凛は思った。


凛の予想通り、そうだ、と麻耶は言った。




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