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初花凛々
第19章 十六夜
凛は再び、先ほどの得体の知れないものが押し寄せている、と感じた。


「んっ、あっ、怖い!怖いっ……」

「大丈夫、怖くないよ」


ぞくっ、とした。麻耶の囁きが、トドメを刺したような気がした。


「あっ、やあっ、麻耶っ、あああーっ」


先ほどよりも激しく、凛の身体は弾み、膣はキュッと締まった。


「んん、もうダメ……」


もうこれで終わりかと思うのに、まだ麻耶は手を緩めてくれない____


凛は麻耶に懇願したことを、後悔した。



















「……どうだった?」


四回は絶頂を迎えた頃、既に凛は身体中から体力も何もかも奪われてしまっていた。


力なくベッドに横たわり、かろうじて開けられている瞼からは、視線が定まらない様子が見て取れた。


やりすぎたか、と麻耶は心配になり、凛の額をそっと撫でた。


「……」

「え、なに?」


凛は声すらも発せず、半開きの唇からは、声にならない声が聞こえた。


「ごめん、凛」


麻耶は反省した。凛を目の前にすると、如何にもこうにも止まらなくなってしまう_____


いや、止まっている。約束通り、ペニスは挿入していないのだから。


「……麻耶」


凛は声を振り絞り、ようやく発したのは麻耶の名前。


呟くと、凛はつつーっと涙を溢した。


「また泣かせちゃったな、ごめん」


謝る麻耶に対し、凛はゆるゆると首を横に振った。


「すっごく……気持ちよかった……麻耶、すごかった……」

「……そう?」

「うん……」


やはり噂通り、麻耶は手練れなんだということが、経験のない凛でもわかった。あんなにも強い快感をもたらされるなんて____と、凛は驚きを隠せなかった。


キスもなく、挿入もないのに、こんなにも気持ちがいいなんて。


じゃあその二つを行えば、どれだけ気持ちいいのか____


欲張りだ、と凛は思った。


これだけの快感を与えられておきながら、もっと麻耶が欲しいとねだる自分に、ほとほと呆れてしまった。
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